初めて吸い込まれた本。
数ヶ月前、大学が嫌でしょうがなくて近くのブックカフェに行った。
アイスコーヒーを買って、お気に入りの席についてから本を探しに行く。
本を読むのが好きになったのはここ数年。とは言っても好きな作家などはいなくて、いつも題名で気になった物を手に取る。
その日も気なった題名の本を見つけて、その本を手に取り席に戻った。
「さよならは小さい声で」
松浦弥太郎のエッセイ小説だ。
エッセイなんてまともに読んだことが無かった。だけど読み始めた途端、不安で嫌でしょうがなかったあの気持ちが嘘のように無くなっていった。
心の周りにまとわりついた嫌な塊たちがみるみる溶けていくような、そんな感じ。
私はとても清々しい気分に変わっていた。
全てを読み終わる前に私は席を立ち、そのままレジへ向かった。
この本が欲しくなった。
今も時々あの嫌な気持ちに全てを奪われそうになる。
でもそんな時はこの本を持ち歩いてカフェに行く。
何度読んでも読み飽きない。むしろもっと好きになる。
そんな初めて吸い込まれた本。